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海外の革新を日本の食卓へ——「へスタンキュー」と「ワンダリングバーマン」がもたらす新たな食体験
食のコワーキングスペース「K,D,C,,,」では、食ビジネスの最前線に立つ企業や個人が、新たなアイデアや可能性を模索し続けています。今回は、アメリカ発のスマートキッチン家電「へスタンキュー」と、ボトル入りクラフトカクテル「ワンダリングバーマン」の日本展開を手がけた「株式会社Felicidad(フェリシダ)」代表・上野雄太郎さんに、日本市場導入の背景や戦略についてうかがいました。
Felicidadの歩みと新たな挑戦
上野さんは、化粧品・健康食品メーカーでの経験を経て2016年に独立。化粧品や健康商品の輸入販売から事業をスタートし、しだいに食品関連の輸出入にも注力。近年では、凍らせて楽しむカップ酒やビーガン向けラーメンパウダーなど、独自の視点での商品開発にも力を入れています。
スマートキッチンの未来「へスタンキュー」
「へスタンキュー」は、スマートフォンと連携し、精密な温度管理を実現するスマートキッチン家電です。
専用アプリを通じてレシピを選択するだけで、料理初心者でもプロ並みの仕上がりを再現できるのが特徴。2021年の日本市場導入時には大きな話題を呼びましたが、日本での展開に伴い、日本のレシピを海外へ、そして海外のレシピを日本へとローカライズする過程では多くの課題がありました。
その一つが、分量表示の違いでした。1カップといえば日本では200mlですが、アメリカでは240mlだったりと、計量単位の差によってそのまま流用できないため、既にあるレシピをもとに試作を行い、調整することが求められました。
また、日本特有の食材を正しく伝えるためには、単なる翻訳ではなく、文化的背景を考慮したローカライズが求められます。和食ではよく使用される「上白糖」ですが、アメリカではなじみが薄く、砂糖の種類の違いによる味やテクスチャーの変化を考慮する必要がありました。
さらに、和⾷ではお馴染みの飾り切りや乱切り、⼩⼝切りなどは英語での説明が難しく、最終的には動画を活用することで、視覚的に理解しやすい工夫を施しました。
こうして言語はもちろん、食文化の異なる環境ならではの課題の数々を乗り越え、日本市場に適した形で展開が始まりました。
そんな苦労の甲斐もあってか、日本での販売開始後、約1時間で初回限定予約数100台が即完売に。日本市場への進出を華々しくスタートしました。
デザインと味覚の融合「ワンダリングバーマン」
2024年に日本市場に導入された「ワンダリングバーマン」は、ニューヨーク発のボトル入りカクテルブランド。
スタイリッシュなデザインと本格的な味わいが特徴です。
上野さんは「家で手軽に本格的なカクテルを楽しめる」という新規性に注目し、日本市場への導入を決定。一般家庭向けのみならず、ホテルのバーや機内サービス、ミュージアムショップなどにも積極的に展開し、BtoCとBtoBの両面で市場を開拓しています。
Felicidadの輸出戦略と文化的課題
さまざまなプロダクトの日本進出を成功させる一方で、海外製品を日本市場に導入する際、国民性や生活スタイルの違いや課題も多く存在します。たとえば、アメリカで一般的なフレーバーつきオイルスプレーは、日本ではなじみが薄く、パクチー風味のオイルスプレーも期待したほどの人気を得られませんでした。
また、日本の販売代理業を行っていたものの、日本市場での成功が見えてくると本国が直接進出を決定し、代理店契約が終了してしまうケースも。上野さんは「契約時のリスク管理も重要」と語ります。
海外製品情報の収集とビジネスパートナーシップ
これまで多くの海外製品の日本展開を手がけてきた上野さん。
海外製品の情報収集については、展示会への参加や現地のマーケット視察、オンラインリサーチはもちろん、世界各国で暮らす友人との情報交換も積極的に行うことで、最新の食トレンドをキャッチし続けています。
今後の展開と食ビジネスの未来
今後の展開として円安を背景に輸出強化を重視しており、特にラテンアメリカ市場への進出を検討することで、アジア・アメリカ市場に集中する他社との差別化を図りたいと語ります。また、JR東日本のホテルとの連携など、新たな販路開拓も進行中。アメリカ、タイ、香港市場の食品トレンドにも注目し、さらなる展開を模索しています。
食文化の違いに合わせた細やかな展開で海外市場を切り拓く
現地の市場に適応させる柔軟な戦略と、食文化の違いを理解したローカライズによって、様々な商品の輸出入事業を展開するFelicidad。「へスタンキュー」と「ワンダリングバーマン」をはじめとする独自の製品選定とローカライゼーションによって、日本の消費者に新たな食体験を提供するだけでなく、グローバル市場における独自のポジションを確立。今後のさらなる展開に期待が高まります。
※㈱Felicidad様は2025年2月末に退会されました